うさぎさんの女の子と暮らしていると、ものすごく、悩む問題です。
悩むのは、ムリがありません。
1.うさぎさんの子宮腺がん(子宮がん)の発生率のデータの高さと、肺転移の恐怖
2.全身麻酔のリスクと、病気ではないカラダを傷つけるのは正しいのか
この2つの要因を天秤にかけても、答えが出にくいのは、ホンネです。
前の記事では、うさぎさんの子宮腺がん(子宮がん)の発生率のデータ、それと、肺転移の恐怖について、まとめておきました。
前の記事を読む方は、コチラ
避妊手術の悩み_2、全身麻酔のリスクと病気ではないカラダを傷つけるのは正しいのか←クリックすると記事に行きます。
今回は、全身麻酔のリスクと病気ではないカラダを傷つけるのは正しいのか、それと最近のトピックスを紹介します。
手術時の全身麻酔のリスクを考える
ネット上では、全身麻酔の危険性は、0.5~5%と言われています。
この麻酔のリスクの0.5~5%は、全身麻酔から目覚めないことや、うさぎさんの場合、気管挿管が難しいこともあります。
人間でも、全身麻酔から目覚めないヒトは、います。
わたしの知人は、長い間、植物状態の末に、亡くなりました。
また、麻酔は、薬ですので、解毒器官である、肝臓や腎臓に毒性を示すのは、事実です。
0.5~5%は、低い数字に見えても、自分に置き換えると、非常に恐ろしい数字です。
大人うさぎになってから、子宮にトラブルがあった場合、外科手術をすることになりますが、この時の麻酔のリスクはもっと上がります。
大人うさぎさんの麻酔リスクについては、論文が見つかりませんでした。
獣医さんが論文を作るのだから、当たり前ですよね。
大人になると、カラダのあちこちに不調がでますし、脂肪がついたりして、手術が難しくなっていきます。
手術の成功率は、若年期は95~99.5%に対して、高齢期(7歳前後)で80%だそうです。
若いときと違って、症状が出てからの手術では、外科手術の成功率は、低くなるようです(ちゃんとした文献は、見つけられませんでしたが)。
成長していて、カラダが大きいから、使う麻酔の量が増えます。
先ほど、うさぎさんの食欲不振は、致命的と申しましたが、手術後の食欲に大きく影響してしまいます。
ヒトのように、大きな生き物であれば、ある程度の日数を食べなくても、大丈夫です。
だけど、うさぎさんの場合、食べないと、肝臓機能がストップしてしまうので、致命傷になるのです。
外科手術をした場合は、入院が必要になるでしょうし、他の検査も必要になります。
麻酔技術は、少しづつですが、良くなっているようです。
例えば、麻酔薬をいろいろなものを混合させて使うことで、特定の薬剤に、過敏に反応してしまう子のリスクを、抑えることもできます。
麻酔のテクニックが、変わったから、手術中の事故は、減っているんだって!獣医さんが、「もっと信じて!」って、言っていたんだ。
病気ではないカラダを、傷つけるのは正しいのか
要するに、ココが一番の問題です。
「病気ではないカラダを、傷つけるのは正しいのか」
ある意味で宗教的であり、哲学的であり、他人が立ち入れない分野です。
だからこそ、飼い主さんが決めることだと、なります。
欧米人は、生まれたときに盲腸を取ってしまうといいます。
ヒトにとって、盲腸は、何にも役割がない臓器だからです。(うさぎさんにとっては、盲腸が命の次に大事ですけどね)
役割がないのに、病気になるのは、困る。だから、病気のリスクを減らすと いう、なんとも合理的な話です。
この考え方が、うさぎさんの避妊手術や去勢手術に、似ているところです。
海外で避妊手術が多いのは、多頭飼育が、当たり前という文化だから、とも解釈できます。
感情論だけでなく、科学で考えると、リスクとベネフィットを比べて、より利益が大きい方に、決定するという方法があります。
悩んでしまったら、避妊手術を、子宮がん予防手術と読み替えて、考えてみることも、やってみます。
男の子の場合は、去勢手術を、性欲ストレス減手術と、読み替えてみると、シンプルな答えを、出せるかもしれません。
リスクは、これまでいろいろ書いたようなものです。
・麻酔の心配
・麻酔の毒性
・手術の予後の心配
・宗教的、哲学的な問題
・仮に失敗した時のストレス
・太りやすくなる
・膀胱をささえる臓器がないので、結石が心配
・毛の抜け代わりが、ずっと起こる(ダラダラ換毛期)
ベネフィットは、こんなところでしょうか。
・子宮トラブルに巻き込まれない
・経済的な得(手術費用)
・血尿などの確認作業が減る
・ホルモンの影響が減り、おだやかになる
・多頭飼いができる
・外出時に望まない妊娠が減る
・仮に子うさぎができた時の里親探しがいらない
・仮に間に合わなかったときの後悔とストレス
・クランベリーなど予防方法が必要ない
ここで、変にうさぎさんのために・・・と考えるとややこしくなってしまいます。
あくまでも、飼い主である自分のために・・・で、選択していい、と思います。
先ほども、言いましたが、やっぱり答えがでなければ、そのままにして、前に進んでもいいと思います。
前に進んでから、もしもの時に、外科手術するという方法もあります。
うさぎさんにも、一応、輸血ができます。
避妊手術や去勢手術に、適齢期はあるのでしょうか?
雑誌、うさぎと暮らす45号(2012)には、以下のように紹介されていました(1-5)。
避妊手術・去勢手術の適齢期:
女の子:6ヶ月齢~8ヶ月齢
男の子:4ヶ月~オスらしくなる前まで
※最近のうさぎの去勢事情:(2017年3月1日追記)
うさぎの去勢は、6ヶ月齢以降で、子うさぎの身体がしっかりとしてから、行われるように、獣医師が推奨しています。
去勢は、繁殖を防ぐ目的だけでなく、ヘルニアと、精巣がんの予防を目的としています。
※イヌの場合:(2017年3月1日追記)
・成犬前の去勢手術の推奨は、間違いであることをアメリカケネルクラブが、報告した。
・幼少期の去勢手術は、寿命を縮る恐れ、排尿障害や関節障害などが、起こる危険性を指摘した。
・去勢手術を成犬以降に遅らせることを推奨し、普及に努めている。
6ヶ月を目安としているのは、カラダに脂肪がついていないときであること、性的に成長期であって、成熟していないから、でしょう。
もう一つ、若い時の傷は、治りやすいということも、ありそうです。
ボクの獣医さんのお話しでは、手術の適齢期は、うさぎさんのカラダの成長度合いで、決まるんだって!ちなみに、ボクの場合は、6ヶ月以上になってからの方が、いいってんだって。
先ほどもお話ししましたが、手術を見送っても、考えが変われば、手術することは、できます。
手術の適齢期をすぎてからでも、2歳くらいまでは、駆け込みの避妊手術があるようです。
納得できる動物病院が、見つかった人もいます。
信頼できる病院が見つかったので、やっぱり、避妊手術してしまおう!と、決心できた人もいます。
やっぱり、決心がつかないのは、動物病院が、見つからないから・・・ということかもしれませんね。
獣医師を選ぶことも、難しいです。
うさぎ専門店のようなところでは、最寄りで、いい獣医師をこっそり、紹介してくれることがあります。
ぜひ、頼ってみてください。
それと、視野は、狭くしないことです。
うさ飼いさんがいたら、積極的に、話してみるといいと思います。
そういう意味では、うさんぽ会や、うさぎオフ会も、参加する意義があるかもしれませんよ。
ボクの獣医さんは、うさぎ専門店さんが教えてくれた先生のところなんだ!ボクとお母さんは、主にバスを使うよ!
うさぎブリーダーから発生した、出産経験による子宮トラブル低下説
うさぎさんの繁殖をするブリーダーさん(ラビトリー)での、「子宮トラブルが、経験上低い」と報告する方がいて、その意見から、大胆な仮説があります。
子うさぎを出産したら、子宮腺がんが予防できるのではないか?という説です。
わたしは、産んだ子のリスクが下がることは、「ない」と思います。
妊娠するという状態は、特別な状態になるということです。
生き物が発展したのだから・・・と考えるのは、乱暴です。
出産によって、活動している子宮が停止すると、考える人もいるようですが、それも違います。
うさぎさんの場合は、刺激が起こると排卵する生き物です。
だけどヒトは、1年中、いつでも発情しています。まず、生き方が違っています。
どちらも、カラダの中で、女性ホルモンの量も質も、完全に変わります。
そして、一度、出産して、女性ホルモンが動き出せば、カラダは変化して、女性ホルモンが、優位な状態になります。
つまり、女性モルモンの影響を受けやすくなり、子宮トラブルに近づいている、と考えることができます。
もともと、ボーイッシュだったうさぎさんでも、出産を経験すれば、確実に「女性らしさ」が、でてきます。
もう一つ、妊娠、出産、授乳は、母うさぎにとって、かなり体力を使います。
つまり、寿命を縮めているのです。
子宮腺がんの前に、寿命がつきている可能性があるのです。
たくさん出産経験のある女性がTVで元気に活動していたりしますが、かなり体力がある人です。
年を重ねたときに、普通の体力では、ガタっと体力がなくなることもあります。
もともと生き物は、ガン予防のために妊娠するわけでは、ありません。
長い年月、そうやって人間などは、繁栄してきたと思うでしょうが、昔は、そこまで長生きが、できていませんでした。
今の課題は、長生きと、質の高い生活です。
ここにきて、長い年月の生き物の自然なやり方を持ち出すのは、ちょっと安易すぎる、と思っています。
女性ホルモンの影響は・・・?
最後にもう二つだけ、トピックスを・・・。
未避妊で、ずっと心配であれば、肉垂(マフ)を、一つの目安にしてみては、どうでしょうか。
マフができるということは、女性ホルモンが影響している、つまり、子宮が動いているということです。
偽妊娠の回数でも、子宮の動きがわかります。
うさぎと暮らしている人たちの記事を読んで、なんとなく、共通していたのは、子どもなのに、ひっつき虫になっているうさぎさん、マフが大きいうさぎさん、やたらなわばりを主張するうさぎさんが、子宮に動きが、あるように、思います。
あくまでも、科学的ではなくて、主観的に、です。
人間でいえば、早熟さんと、いうか・・・これは、どうにもなりません。
もともと、うさぎさんは、たくさん子どもを産む生き物です。
男の子は、もんもんと、繁殖のことばかり考えていて、女の子は、背中をなでられるだけで、ドキドキしてしまいます。
人間の男のヒトにも、ドキドキしたりして、「なんなの、コレ・・・」状態です。
もし手術の名前が、避妊手術は子宮がん予防手術で、去勢手術は、性欲ストレス減手術だったら・・・どう選択しますか?
もちろん、うさぎさんのために、自分が、仕事を辞めたり、仕事を変えたりしてもいいと思えるのであれば、避妊手術しないことを選択しても、いいと思います。
うさぎさんと一緒にいる時間を増やせば、早期発見できるからです。
生活が成り立てば、いいのです(わたしも、仕事を変えています)。
飼い主の選択に、うさぎさんは、ついていくしかない、のです。
お母さんの生き方まで、変えちゃうんだね・・・。ボクたちって、神秘的だなぁ~
まず、予防方法で、避妊手術以外に、何かないものか・・・。
もっと、ホルモン療法や、代替療法があっても、よさそうなのに、見つかりません。
研究が、進んでいないのでしょう。
アメリカのイリノイ大学で、クランベリーは、がん予防に効果があると、研究しています。
(※クランベリーの効果:もう少し詳しい情報を2009年頃に入手していたと記憶しているのですが、見つからなくなってしまいました。探しておきます。)
少し前から、ヒトの子宮トラブルには、葉酸も見直されていますので、イチゴもいいのではないか、と推測しています。
今、わたしは、新しいことがわかるたびに、女性ホルモンのおそろしさを、改めて感じています。
人間の場合ですが、喫煙経験のない、女性の肺がんが多くなっています。
昔は、肺がん=タバコとシンプルな因果関係が、結びついていました。
しかし、どうも、この肺がん(転移ではなく、原発性の肺がん)は、女性ホルモンが影響しているのではないか?という仮説があるようなのです(1-6)。
妊娠を望むなどして、ホルモン治療をしている人が、肺がんになる可能性がある、とのことです。
もちろん、もともと女性ホルモンが多い人は、肺がんになる可能性があるの群に入ると思います。
女性ホルモンの研究がもっと進んでくると、将来リスクに備えた人生を考えることが、できるようになるはずです。
それでも・・・うさぎさんの場合は、答えは、出にくいものです。
いろいろな意見がありますが、わたしは、獣医さんの意見だけでなく、第一は、自分のために選択することが大事です。
その次に、うさぎさんのために(うさぎさんのカラダ、呼吸器や心臓の心配なども含めて)、選択すればいいと思います。
最後に、獣医さんのご意見を参考に聞く・・・それが、納得しやすいと思います。
わたしの方は、もっと、論文をさがしてみますね。
今日は、この辺で・・・。
引用文献:
1-5) うさぎと暮らす マガジンランド発行、45, pp.18, 2012.
1-6) Liu Y., Inoue M., Sobue T., Tsugane S.: Reproductive factors, hormone use and the risk of lung cancer among middle-aged never-smoking Japanese women: a large-scale population-based cohort study. Int. J. Cancer. 117(4), 662-666, 2005.※人間の医学の論文です。